TOYOTA GAZOO Racingへの取材では、GRモーターオイルは高品質なGroup III+基油を採用し、Circuitにはエステルも配合すると説明されています。
ただし「Group III+だから普通」「エステルだから上」という単純な話ではありません。Circuit・Endurance・Touringは、レスポンスや連続高負荷への強さなど、求める性能から逆算して処方を変えているのがポイントです。
GRオイルのベースオイルはGroup III+?確認できる事実を整理
GRオイルのベースオイルについて確認できる重要な情報は、TOYOTA GAZOO Racingへの取材で、高品質なGroup III+を使用していると説明されていることです。
この情報は、CARTUNEマガジンが2021年12月4日に公開し、2024年11月14日に更新したTOYOTA GAZOO Racingへの取材記事で紹介されています。
ここは情報源を分けて考えてみましょう。
- TOYOTA GAZOO Racingへの取材:GRモーターオイルの基油や処方、開発思想など
- トヨタ公式情報:各製品の特徴、適合、交換時期など
- ドライバー・開発関係者の評価:実際に走らせた際のフィーリング
この3つは情報の性格が違います。
特に「Group III+」については取材で明かされた情報なので、現行製品の配合比率まで公開されている、という意味ではありません。処方は変更される可能性もあるため、そこは分けて理解しておきたいですね!
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
そもそもベースオイルとは?
エンジンオイルは、大きく考えるとベースオイル(基油)と添加剤を組み合わせて作られています。
ベースオイルは文字どおりオイルの土台です。
そこへ摩擦を調整する成分、汚れを抑える成分、酸化を抑える成分などを組み合わせ、エンジンオイルとして求められる性能を作っていきます。
つまり、ベースオイルの種類だけを知っても完成したエンジンオイルの性能すべてが分かるわけではありません。
料理でいえば、ベースオイルは重要な食材のひとつ。良い食材は大切ですが、完成した料理はほかの材料や配合、調理方法でも大きく変わりますよね!
Group III+はAPIの正式な独立分類ではない
もうひとつ覚えておきたいのが、「Group III+」はAPIの基油分類における正式な独立グループ名ではないことです。
基油についてはGroup I、II、III、IV、Vという分類がありますが、「Group III+」という独立したAPIカテゴリーが追加されているわけではありません。
一般には、高性能化されたGroup III系基油を表す言葉として「Group III+」が使われています。
そのため、「III+だからGroup IVの一つ下」というように数字を性能ランキングとして読むのは適切ではありません。
TOYOTA GAZOO Racingへの取材でも、以前はGroup IVやGroup Vが高性能オイルの代表格として捉えられることが多かった一方、技術の進歩によってGroup III系基油の性能も向上してきたという趣旨が説明されています。
そしてGRモーターオイルでは、オイル全体として求める性能を検討した結果、高品質なGroup III+を選択したとされています。
基油の名前ではなく、完成した処方から評価する。
GRオイルを理解するときは、この視点が重要です。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
CircuitはなぜGroup III+にエステルを配合している?
Circuitでは、摩擦調整剤であるFM(フリクションモデファイヤー)の溶解性を高める目的で、ベースオイルにエステルを配合したと取材で説明されています。
ここは「GRオイルはエステル系なの?」と検索している方にとって、かなり気になるポイントではないでしょうか。
FMは簡単にいえば、エンジン内部で発生する摩擦を調整するための添加剤です。
ピストンなどの部品が動くときには摩擦抵抗が発生します。その抵抗を適切に減らすことで、レスポンスなどにつなげようというのがCircuitの狙いです。
TOYOTA GAZOO Racingへの取材によれば、通常のトヨタ純正オイルやGRモーターオイルにもFMが使われています。
その中でもCircuitは種類と添加量を増やし、より積極的な低フリクション化を狙っています。
ところがMo(モリブデン)系FMには、ベースオイルに溶けにくいという課題があります。
そこでFMを溶けやすくするためにエステルを配合したというわけです。
取材では、その結果としてCircuitのFM添加量はTouringや通常のトヨタ純正オイルのおよそ2倍になったと説明されています。
ここで誤解したくないのが、「エステル配合=エステル100%」ではないことです。
確認できるのは、CircuitでFMの溶解性を高めるためにエステルを使用しているという事実です。エステルの具体的な配合率までは、この取材情報からは判断できません。
「エステル主体」「ほぼエステル」といったところまで話を広げるのは避けたほうが正確ですね。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
Circuit 0W-16と0W-20の数値は?
取材で紹介されたCircuitの代表的なスペックを整理すると、次のようになります。
| 項目 | Circuit 0W-16 | Circuit 0W-20 |
|---|---|---|
| 40℃動粘度 | 21.9mm²/s | 23.7mm²/s |
| 100℃動粘度 | 6.4mm²/s | 7.4mm²/s |
| 粘度指数 | 274 | 310 |
| HTHS粘度(150℃) | 2.3mPa・s | 2.6mPa・s |
| 推奨交換サイクル | 5,000km | 5,000km |
特に目立つのが、Circuit 0W-20の粘度指数310です。
粘度指数は、温度変化に対して粘度がどれくらい変化するかを見るための指標です。基本的には数値が高いほど、温度による粘度変化が小さいことを示します。
ただし、粘度指数310だけを見て「ほかのオイルより総合的に優れている」と判断することはできません。
耐摩耗性や清浄性、酸化安定性、せん断安定性などは別の要素だからです。
Circuitは「スーパーハイレスポンス」を狙ったシリーズ。
この特徴的な数値も、レスポンスと低フリクションを追求した処方の一部として見ると分かりやすいでしょう。
なぜGRオイルは0W-16や0W-20でもスポーツ走行を想定できる?
GRモーターオイルでは、エンジン側とオイル側の技術進歩を背景に、適合するエンジンなら低粘度でもスポーツ走行を想定した設計が可能になったと説明されています。
「サーキットなら10W-40や15W-50のような硬いオイルじゃないの?」と感じる方もいるかもしれません。
以前からスポーツ走行では、高温側の粘度を上げて油膜を確保する考え方が使われてきました。
ところが現在のエンジンは加工技術が進歩し、各部のクリアランスをより細かく管理できるようになっています。
冷却性能など、車両側の技術も進化しています。
さらにメーカー説明では、高品質なベースオイルを利用することも低粘度化を支える要素として挙げられています。
つまりGRモーターオイルの発想は、単純に「スポーツ走行だから粘度を上げよう」ではありません。
必要な保護性能などを考慮しながらフリクションを抑え、レスポンスを引き出す方向からオイルを設計するわけです。
ただし、これは「0W-20なら高負荷走行に何でも使える」という意味ではありません。
むしろGRオイルを調べると、同じ0W-20でも用途と適合を細かく分けていることが分かります。
Endurance 0W-20ではG16E-GTSを使った耐久試験も実施
その代表例がEndurance 0W-20です。
開発では、GRヤリスGR-FOURに搭載される1.6L直列3気筒ターボのG16E-GTSエンジンを使った高速・高負荷連続耐久試験が行われたと説明されています。
Enduranceは、名前どおり高負荷を連続してかける場面を重視したオイルです。
そこで重要になる技術が、次に紹介する「ノンポリマー」です。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
Circuit・Endurance・Touringは何が違う?
GRモーターオイルは、Circuitがレスポンス、Enduranceが連続高負荷への耐久性、Touringが日常走行とのバランスを重視するという違いがあります。
同じGRブランドでも、狙っているゴールが違うんですね!
Circuitは「スーパーハイレスポンス」を追求
Circuitは、低フリクション化によってレスポンスを引き出すことを強く意識しています。
先ほど紹介したエステルも、FMを多く配合するための処方につながっています。
取材では、2019年のニュルブルクリンク24時間レースへの参戦経験を持つ松井孝允選手によるCircuit 0W-20の評価も紹介されています。
松井選手は低回転域から低フリクションの効果を感じ、サーキットだけでなくワインディングや市街地でも楽しめそうだという趣旨のコメントをしています。
蒲生尚弥選手も86でテストし、エンジン回転が上昇する際、特に4,000〜5,000rpm付近から軽さを感じたという趣旨の評価をしています。
もちろん、これはドライバーによる試乗時のフィーリングです。
車種やエンジン、車両状態、走行条件によって体感は変わるため、「入れれば必ず同じ変化が出る」という意味ではありません。
それでも、Circuitが単なる高温保護だけではなく、ドライバーが感じる回転レスポンスまで商品設計の対象にしていることは読み取れます。
出典:GR MOTOROIL | GR PARTS – GAZOO Racing https://toyotagazooracing.com/jp/gr/grparts/oil/
Enduranceはノンポリマーで連続高負荷を重視
Endurance 0W-20は、同じ0W-20でもCircuitとは設計思想が違います。
特徴はノンポリマー技術です。
一般的なマルチグレードオイルでは、温度変化に対する粘度特性を調整するため、粘度指数向上剤としてポリマーを利用することがあります。
一方、高負荷運転ではオイルに強いせん断力が加わります。
ポリマーがせん断されると、使用に伴う粘度低下につながる場合があります。
TOYOTA GAZOO Racingへの取材では、一般的なオイルを厳しい条件で試験した場合、10%程度の粘度低下が起きるケースがあるという説明も紹介されています。
そこでEnduranceは、ポリマーに頼らない処方によって、せん断による粘度低下を抑えるという方向を選択しています。
取材時に紹介されたEndurance 0W-20の数値は、40℃動粘度37.5mm²/s、100℃動粘度7.3mm²/s、粘度指数165、HTHS粘度2.6mPa・sです。
Circuit 0W-20の粘度指数310と比べると、Enduranceは165。
数字だけを比べればCircuitのほうが高く見えますが、Enduranceは粘度指数の大きさを競っている製品ではありません。
連続高負荷で粘度低下を抑え、油膜や油圧を維持することを重視しているからです。
同じ0W-20でも、CircuitとEnduranceでは設計上の優先順位が違う。
GRオイルを理解するうえで、この比較はかなり重要です。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
Touringは日常走行とのバランスを狙う
Touringは、Circuitほどレスポンスへ特化させず、通常の純正オイルとの間を埋めるような位置づけです。
取材では、Circuitのレスポンス感を生かしながら、より幅広いユーザーが使いやすいオイルを目指して開発されたと説明されています。
取材時のTouring 0W-30は、40℃動粘度33.1mm²/s、100℃動粘度9.9mm²/s、粘度指数307、HTHS粘度3.0mPa・s。
Touring 5W-40は40℃動粘度54.6mm²/s、100℃動粘度15.0mm²/s、粘度指数289、HTHS粘度4.2mPa・sでした。
そしてTouring 5W-40が生まれた背景も面白いところです。
オートサロンでGRモーターオイルを紹介した際、以前のスープラ、セリカ、MR2、MR-Sなどのユーザーから、適合するGRオイルがないという声が寄せられたことが開発のきっかけになったとされています。
そこで、旧世代のスポーツモデルにも対応しやすい粘度として5W-40が加わりました。
これは単純にラインナップを増やしたという話ではありません。
新しい低粘度エンジンと、過去のスポーツエンジンでは必要な粘度や適合条件が違うことを、GR自身が製品ラインナップで示しているとも考えられます。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
GRオイルはどう選ぶ?基油より先に確認したいポイント
GRオイル選びでは、Group III+やエステルという基油情報より先に、車種・エンジン・指定粘度・公式適合を確認するのが基本です。
ここは整備士としてオイルを調べるときにも大切にしたい判断手順です。
「0W-20と書いてあるから、0W-20指定車なら全部使える」とは限りません。
GRモーターオイルは、そのことがとても分かりやすい製品です。
同じ0W-20でも適合が違う
2026年5月時点として示されたトヨタの適合情報では、GRヤリスとGRカローラのG16E-GTSにEndurance 0W-20は「○」とされています。
一方、Circuit 0W-20はG16E-GTSに「×」です。
粘度表示だけを見れば、どちらも0W-20ですよね。
でも、設計目的まで見ると違います。
Circuitは低フリクションとレスポンスを強く意識したオイルなのに対して、Enduranceは高性能ターボでの連続高負荷を考えた処方です。
さらに、過去の3S-GTEや1JZ-GTEなどのターボエンジンについては、Endurance 0W-20、Circuit 0W-16、Circuit 0W-20、Touring 0W-30が「×」で、Touring 5W-40が「○」とされていました。
JZ系・ZZ系などのNAエンジンについては、Touring 0W-30とTouring 5W-40が「○」とされています。
ただし、適合情報は更新される可能性があります。実際に使用するときは、その時点のトヨタ公式適合情報や車両の取扱説明書を確認し、不明な場合は販売店へ相談するのが確実です。
ここから見えてくるのは、「古い車なら硬いオイル」という単純な法則でもないことです。
車種、エンジン型式、メーカー指定、GR側の適合判定を順番に確認する必要があります。
出典:GR MOTOROIL | GR PARTS – GAZOO Racing https://toyotagazooracing.com/jp/gr/grparts/oil/
オイル選びはこの順番で考えると分かりやすい
GRオイルに限らず、エンジンオイルを比較するときは次の順番で見ると迷いにくくなります。
1. 愛車のメーカー指定粘度・規格を確認する
2. 使用したいオイルの公式適合を確認する
3. 街乗り、スポーツ走行、連続周回など使用目的を考える
4. 交換サイクルを確認する
5. 最後に基油や添加剤、処方の特徴を比較する
「エステルが入っているからこれ!」ではなく、まず適合。
そのあとで、自分が求める性能と製品のキャラクターを合わせていくイメージです。
この順番なら、PAOやエステルなどの魅力的な言葉だけに引っ張られにくくなります。
交換サイクルも同じではない
オイル交換時期にも違いがあります。
2026年5月時点として示された公式情報では、Endurance 0W-20は5,000kmごとの交換が推奨されています。
Circuit系も5,000km交換が推奨されています。
一方のTouring系は、車両取扱書に記載されたメンテナンスサイクルに従う考え方で、公式表では10,000km、15,000kmごとの例も示されています。
GR Supra向けのToyota Genuine Motor Oil SP 0W-20 C5については、CBS(コンディション・ベースド・サービス)に従った交換が推奨されています。
つまり、高性能オイルだから交換期間まで長いとは限りません。
Circuitのように特定の性能を強く狙ったオイルでは、指定された交換サイクルまで含めて製品の使い方と考えたほうがいいでしょう。
出典:GR MOTOROIL | GR PARTS – GAZOO Racing https://toyotagazooracing.com/jp/gr/grparts/oil/
GRオイルの価格とラインナップはどう見る?
GRモーターオイルの価格は時期によって変わるため、古い記事の価格を現在価格として扱わないことが大切です。
2021年公開の取材記事では、当時の4L価格としてCircuit 0W-16と0W-20が各13,200円、Endurance 0W-20が14,080円、Touring 0W-30が8,800円、Touring 5W-40が9,460円と紹介されていました。
一方、その後のトヨタ公式カタログでも価格改定が確認できます。
つまり検索結果に出てくる数年前の価格は、現在の販売価格と一致するとは限りません。
さらに価格以上に注意したいのが、一番高いGRオイルが自分の車にとって一番良いとは限らないことです。
たとえばG16E-GTSでは、同じ0W-20でもEnduranceとCircuitで適合が異なります。
旧世代の一部スポーツエンジンではTouring 5W-40が適合する例もあります。
オイル選びでは値段を性能ランキングとして見るのではなく、適合と使用目的を先に確認しましょう。
価格やラインナップは変更される可能性があるため、購入時には最新のトヨタ公式情報や販売店で確認してください。
GRオイルの処方を整備士目線でどう考える?
ここからは、公開されている情報を踏まえた僕の考察です。
GRモーターオイルで注目したいのは、「高性能な基油を使いました」で開発が終わっていないことだと考えています。
CircuitではGroup III+を土台にしながら、FMをより多く使うためにエステルを配合しています。
一方、Enduranceでは連続高負荷を重視してノンポリマーという別の方法を選んでいます。
この2製品を比べるだけでも、「高性能オイルにはひとつの正解がある」という考え方が当てはまりにくいことが分かります。
Circuit 0W-20とEndurance 0W-20は、缶に書かれる粘度表示だけなら同じです。
しかしCircuitはレスポンス、Enduranceは高負荷を連続してかけた際の粘度維持を重視しています。
同じ粘度表示でも、中身の設計思想と適合は別物になり得る。
僕はここが、GRオイルから学べる一番実用的なポイントだと思います。
「Group III・IV・V」を性能ランキングにしない
オイルを詳しく調べ始めると、Group III、PAO(Group IV)、エステル(Group V)という言葉が気になってきますよね!
分類を知ること自体はとても役立ちます。
ただ、そこから「IIIよりIVが上、IVよりVが上」と完成油の性能まで一直線に順位付けすると、実際の製品設計を見誤る可能性があります。
GRのCircuitはその好例です。
ベースとなる高品質なGroup III+にエステルを組み合わせていますが、エステルを入れる理由も「高級感を出すため」ではありません。
公開された説明では、FMを溶けやすくして、狙った低フリクション性能を作るためです。
これは「何の基油を使うか」から始めるというより、「どんな性能が欲しいか」から逆算して材料を組み合わせる考え方と捉えられます。
Enduranceなら、求める性能が変わるため処方も変わります。
この視点を持っていると、GR以外のオイルを見るときにも「全合成油」「PAO配合」「エステル配合」という表示だけで判断せず、その製品がどんなエンジンと使用条件を想定しているのかまで確認しやすくなります。
GRオイルは「粘度番号の意味」を考える教材にもなる
もうひとつ、僕がGRモーターオイルで興味深いと感じるのが、粘度番号と実際の用途を切り離して考えられる点です。
「0W-20=省燃費用」「5W-40=スポーツ用」とだけ覚えてしまうと、Endurance 0W-20の存在をうまく説明できません。
反対に「高性能オイルなら低粘度でも全部大丈夫」と考えても、Circuit 0W-20とG16E-GTSの適合関係を説明できません。
つまり粘度はとても重要ですが、粘度だけでは製品の用途も適合も決まらないんです。
車両メーカーが指定する条件がまずあり、その範囲の中でオイルメーカーが処方を作り込んでいく。
GRモーターオイルのラインナップを見ると、その関係がかなり分かりやすく見えてきます。
モータースポーツ由来でも日常領域まで考えられている
GRモーターオイルは、ニュルブルクリンク24時間レースをはじめとしたモータースポーツ活動を背景に開発されています。
しかし、市販されるGRモーターオイルはレースだけで使う専用品という位置づけではありません。
GAZOO Racing Companyの凄腕技能養成部Nチームグループに所属する江藤正人氏は、Endurance 0W-20について、サーキットで連続周回した際の熱ダレ感が非常に少なかったことに加え、街乗りや高速道路でも回転フィーリングを楽しめるという趣旨の評価をしています。
これはあくまで開発・評価に関わる人物によるフィーリング評価であり、すべてのユーザーが同じ変化を感じることを保証するものではありません。
それでも、連続高負荷だけを満たせば完成ではなく、一般走行でのフィーリングまで評価対象としていることは注目できます。
僕はここに、モータースポーツで得た知見を市販車の日常領域へ落とし込むGRモーターオイルの設計思想が表れていると考えています。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
GRオイルのベースオイルを調べた結論
GRオイルのベースオイルについては、TOYOTA GAZOO Racingへの取材で、高品質なGroup III+を使用していると説明されています。
そしてCircuitでは、摩擦調整剤FMの溶解性を高めるためにエステルを配合。FMの種類と量を増やし、低フリクションとスーパーハイレスポンスを狙っています。
Endurance 0W-20は方向性が異なり、ノンポリマー処方によって高負荷時のせん断による粘度低下を抑える設計です。G16E-GTSを使った高速・高負荷連続耐久試験も行われています。
Touringは日常走行とのバランスを重視し、0W-30に加えて旧世代のスポーツモデルにも対応しやすい5W-40が設定されました。
この3シリーズを比較すると、GRモーターオイルの特徴が見えてきます。
Circuitはレスポンス、Enduranceは連続高負荷、Touringは日常とのバランス。
同じGRブランドでも目的が違うため、基油のグループや粘度番号だけで優劣を決めることはできません。
実際に選ぶときは、まず愛車の取扱説明書で指定粘度・規格を確認し、次に最新の公式適合情報を確認してみよう!
そのうえで街乗り中心なのか、スポーツ走行を楽しむのか、連続した高負荷走行まで想定するのかを考えると、自分の愛車に必要なオイルがずっと見えやすくなります。
出典:CARTUNE 『トヨタが本気で作ったGRモーターオイル、開発秘話を取材しました!』 https://cartune.co.jp/magazine/articles/4441
よくある質問
GRオイルのベースオイルはPAOですか?
TOYOTA GAZOO Racingへの取材では、GRモーターオイルには高品質なGroup III+基油を使用していると説明されています。
今回確認した情報から、GRモーターオイル全体を「PAO主体」と断定することはできません。なおCircuitでは、FMの溶解性を高める目的でエステルを配合したことが明らかにされています。
GRオイルのCircuitはエステル100%ですか?
エステル100%と判断できる情報は確認できません。
取材で説明されているのは、CircuitでFMを溶けやすくするためにベースオイルへエステルを配合したという内容です。具体的なエステル配合率までは明らかにされていないため、「エステル100%」「エステル主体」と断定しないほうが正確です。
GRヤリスにはCircuit 0W-20とEndurance 0W-20のどちらを選ぶ?
2026年5月時点として示されたトヨタの適合情報では、G16E-GTS搭載GRヤリスはEndurance 0W-20が「○」、Circuit 0W-20は「×」です。
どちらも0W-20ですが、設計目的と適合は同じではありません。使用前には車両の取扱説明書と最新のトヨタ公式適合情報を確認し、不明な場合は販売店へ相談してください。
松本拓海(現役ディーラー整備士ブロガー)


コメント